初等待ち行列の練習問題のワークブック
はじめに
本書は初等待ち行列の練習問題のワークブックです.初等待ち行列とは,到着特性がポ アソン分布でサービス時間特性が指数分布になるものをいいます. 初等待ち行列の入り口はポアソン分布と指数分布です.そして本書ではゴールをアーラ ン C 式とアーラン B 式の違いを理解することに定め,そこに至るためのモデルを積み上 げてゆきます. 初等待ち行列は,応用情報処理技術者試験にも出題される基礎分野ですが,試験は選択 肢から記憶している公式を選び出したり,もしくは出題されたパラメータを公式に当て はめて算出した値を選ぶ問題が出題されます.残念ですが本書はこれらの問題を解くた めの早道となるワークブックにはなりません.本書は,待ち行列のモデルからシステム 内客数の確率分布と平均を求める計算過程を追いかけることに主眼をおきます.このた め,本書の大半は数式で埋め尽くされています.公式は憶えるものではなく導出過程を 覚えるものというポリシーで,是非とも紙とペンを持ち公式導出を試みていただきたい と思います. 本書の残り半分は,導出した公式の妥当性を確認するためのコンピュータシミュレーショ ンです.変数に適当な値を選び公式より理論的な計算値を得たのち,同じパラメータで その問題のシミュレーションを行い結果を比較します.シミュレーション結果が理論値 に比べて妥当であるかどうかの検討は省きます.それよりむしろ,データをグラフなど で可視化して,論理的に得た公式に直感的な理解や解釈ができるように構成しました.